キャンアピコラム

CANAPI COLUMN

国立病院機構 仙台医療センターにおけるアピアランス外来

文責 ソシオエステティシャン 瀬戸真由美

1はじめに
乳がんは薬物療法がとても有効であり、多くの乳がん患者さんがアンスラサイクリンやタキサンを中心とした化学療法を受けています。しかし、化学療法による脱毛などの外見の変化は患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なうと考えられます。外見の問題に関する対策として、近年アピアランスケアと呼ばれる美容専門家などによるサポートの重要性が提唱されています。仙台医療センターでは2020年4月から美容専門家によるアピアランス外来を開始したので紹介いたします。
2当院におけるアピアランス外来
仙台医療センターでは、乳腺外来の診察室のひとつを使用して毎月第1,3月曜日の9:00~17:00にアピアランス外来を行っています(図1)。アピアランス外来を行うのは、美容専門家であるソシオエステティシャン(後述)です。対象は主に化学療法対象患者さんであり、乳がん患者さん以外も対象です。アピアランス外来で行っている内容は、
1、脱毛時のアドバイスウィックやケア帽子の情報伝達や試着と装着練習
2、ウィックやケア帽子の情報伝達や試着と装着練習
3、メイクトレーニング(眉やポイントメイクなど)(図2)
4、有害事象による爪の割れなどのケアや保護(ネイル含む)とトレーニング(図3)
5、乳がん手術後のパットや下着の試着や情報伝達
6、色素沈着に対するスキンケアアドバイスやトレーニング
7、マッサージ(フェイシャル、ヘッド、ハンド、フット)
などで、必要に応じてセルフケアができるように導きます。治療が長期化する中で継続的にサポートが必要な患者さんには、その時その時に必要なケアと情報提供などを行い、治療を乗り越えていただく一つの手立てとなるようアピアランス外来を利用していただいています。
3ソシオエステティシャンについて
フランス発祥のソシオエステティックは、2007年から一般社団法人 日本エステティック協会が養成講座を開講しソシオエステティシャンの育成を国内で開始しました。ソシオエステティックとは、「人道的・肉体的・社会的な困難を抱えている人に対して医療や福祉の知識に基づいて行う総合的なエステティック」です。ソシオエステティシャンがチーム医療の一員として医師など医療専門職の管理・指示の下、患者さんの病状や症状を把握し、肉体的・精神的苦痛の軽減を図る目的で必要に応じた施術・アドバイス・トレーニング・情報提供等を行っています。
4アピアランス外来の今後
アピアランス外来ではタッチングを通して患者さんの傾聴を始め、その患者さんに必要な事柄を決め対応しています。告知から治療選択まで短期間で自己決定が必要な中で、追いつかない気持ちを涙流しながら吐露される方も少なくありません。がん告知後の患者さんは悲しんだり不安が強くなったり混乱したりする方も多くいる中でソシオエステティシャンが患者さんのケアを行いながら対話することで、患者さんの心理的不安を和らげ、闘病生活・サバイバーズシップのQOLの維持・向上に寄与することを目的としておこなっています。アピアランスケアの需要が多い中で、医療従事者が患者さんのアピアランスケアができることを願い、医療従事者向けのアピアランス講習会も開催しています。
宮城県では現在、一人のソシオエステティシャンが仙台医療センターと石巻赤十字病院、宮城県立がんセンターで患者さんのアピアランス外来を担当しています。このように美容専門家が複数の施設でアピアランス外来を行うことにより、より多くの患者が恩恵を受けられると考えられます。
5おわりに 治療で生じる外見の変化は様々な苦痛と不安が大きい中で、個々の問題解決に導くアピアランスケアサポートやリラクセーションが必要な患者さんは多くおります。アピアランス外来ではソシオエステティックを通し、病院は辛いだけの場所ではなく、自分を大切に思えて前向きに治療を受け入れる状態で、楽しく癒される場所を目指したいと思っています。今後も患者さんの悲しみや不安に寄り添い、一人でも多くの患者さんに介入できるよう努力していきたいと思います。


図1 当院でのアピアランス外来風景


図2メイクトレーニング


図3 爪の割れなどのケアや保護(ネイル含む)とトレーニング


この件に関する問い合わせ先
国立病院機構 仙台医療センター乳腺外科 渡辺隆紀 022-293-1111

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